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Column 06 — Inherited Property

相続した実家、どう売る?
登記の義務化から空き家3,000万円控除まで、期限と順番を整理

公開日:2026年7月9日 執筆:K agency 編集部(宅地建物取引士・FP・金融機関出身の実務知見)

親から実家を相続した。自分たちは住む予定がない——そんなとき、多くの方が初めて「相続した不動産の売却」に直面します。通常の売却と違い、登記・遺産分割・特例税制という3つの手続きが絡むため、順番を間違えると時間もお金も余計にかかってしまう分野です。

本記事では、相続不動産を売却するまでの流れを5つのステップに整理し、期限のある義務(相続登記)と、数百万円の差になりうる税務特例を、時系列でまとめます。

本記事の前提

2026年7月時点の制度にもとづいて整理しています。税制は改正される可能性があり、適用可否は個別の事情によります。実行前に税理士・司法書士など専門家への確認をおすすめします。

この記事で分かること

全体の流れ ― 5つのステップ

ステップやること期間の目安
① 相続人・遺産の確定戸籍収集、遺言の有無確認、財産目録1〜2ヶ月
② 遺産分割協議誰がどう相続するか合意し、協議書を作成1〜6ヶ月(揉めると年単位)
③ 相続登記名義を相続人へ変更(司法書士に依頼が一般的)2週間〜1ヶ月
④ 査定・売却活動複数査定→媒介契約→販売→売買契約3〜6ヶ月
⑤ 引き渡し・税務申告決済・引き渡し、翌年に譲渡所得の確定申告契約後1〜2ヶ月+翌年申告

重要なのは、亡くなった方の名義のままでは売却できないこと。③の相続登記が済んで初めて売り出せます(実務では②〜④を並行して進めることも可能です)。

期限に注意 ― 相続登記は「義務」になりました

2024年4月から相続登記が義務化されています。ポイントは3つです。

遺産分割がまとまらない場合でも、「相続人申告登記」というシンプルな申出で義務を果たせる仕組みがあります。放置だけは避けてください。

税金の基本 ― 「取得費が分からない」が最大の落とし穴

売却して利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。計算式は次のとおりです。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

取得費=親がその不動産を買ったときの価格(建物は減価償却後)。相続した場合、親の取得費を引き継ぎます。

問題は、古い実家では購入時の契約書が見つからないことが多い点。取得費が証明できないと「売却価格の5%」(概算取得費)しか引けず、税負担が大きく膨らみます。例:2,000万円で売却→取得費不明なら100万円しか引けない。まずは契約書・領収書・パンフレット等を徹底的に探すことが、実は最大の節税です。

なお、所有期間(親の所有期間を通算)が5年超なら税率は約20%(長期譲渡)、5年以下なら約39%(短期譲渡)です。実家なら通常は長期に該当します。

使えれば大きい、2つの特例

① 取得費加算の特例(相続税を払った方向け)

相続税を納めた場合、その一部を取得費に加算できる特例です。適用期限は相続開始から3年10ヶ月以内の売却。相続税の納税があった方は、売却タイミングをこの期限内に収めると税負担を抑えられる可能性があります。

② 空き家の3,000万円特別控除(実家売却の本命)

亡くなった方が一人で住んでいた家を相続して売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。主な要件は——

①と②は併用できません。どちらが有利かは相続税額と譲渡益次第なので、両方のパターンで試算してから決めるのが定石です。

「とりあえず共有名義」は将来の火種

兄弟で「とりあえず半分ずつ」と共有名義にするケースは多いのですが、共有不動産の売却には全員の同意が必要です。将来、誰かが認知症になったり、相続が次の世代に進んで共有者が増えたりすると、売りたくても売れない状態になりがちです。売却する方針なら、換価分割(売って現金で分ける)を遺産分割協議書に明記して進めるのがスムーズです。

よくある質問(FAQ)

相続してすぐ売ると、贈与税や余計な税金がかかりますか?
かかりません。むしろ取得費加算の特例(3年10ヶ月)や空き家特例(3年目の年末)など、早めに売る方が税制上有利な仕組みが多くなっています。
実家に残った家財はどうすればいいですか?
原則、売却(引き渡し)までに撤去が必要です。遺品整理業者で数万〜数十万円が目安。買取業者への売却や自治体回収を組み合わせると圧縮できます。
相続人の一人が海外在住・音信不通でも売れますか?
遺産分割協議は相続人全員の参加が必要です。音信不通の場合は不在者財産管理人の選任など法的手続きが必要になるため、早めに司法書士・弁護士へ相談してください。
査定は1社でいいですか?
複数社をおすすめします。相続物件は「早く現金化したい」心理につけ込んだ安値買取の提案も見られます。仲介での売却相場と買取価格の両方を把握したうえで判断するのが安全です。

実務チェックリスト

相続不動産の売却は、「手続きの順番」と「期限のある特例」を知っているかどうかで、手取りが数百万円変わりうる分野です。悲しみの中で慌てて決める必要はありませんが、期限だけは先に押さえて、逆算で動く——それが家族の資産を守る判断軸です。

参考資料(最新の内容は必ず各出典でご確認ください)
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」(2024年4月施行)
  • 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
  • 国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引を勧誘・推奨するものではありません。特例の適用可否は個別要件の確認が必要です。必ず税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。

実家の売却、期限から逆算した進め方をご提案します。

相続登記の段取りから、特例を活かした売却タイミング、複数査定まで。
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