不動産の売買・賃貸の契約前には、宅地建物取引業法にもとづき、宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。取引士証を提示したうえで、書面(電磁的方法による場合を含む)を交付して説明することが義務づけられています。
問題は、この説明が契約直前に、初めて聞く情報として、まとめて行われることが多い点です。数十ページの書面を1時間程度で説明され、その場で理解しきるのは容易ではありません。
重要事項説明書を、説明の日より前に送ってもらうこと。これは正当な要求であり、多くの場合応じてもらえます。事前に目を通し、疑問点をリスト化してから臨めば、その場の1時間の密度がまったく変わります。
確認すべき7つの項目
1. 登記された権利の内容
その不動産に、抵当権・賃借権・地役権などの権利が設定されていないかを確認します。特に抵当権については、決済時にどのように抹消されるのかを明確にしておく必要があります。
売主の住宅ローンが残っている場合、決済と同時に完済・抹消される段取りになっているかが確認ポイントです。
2. 法令にもとづく制限
都市計画法・建築基準法などによる制限です。ここで確認したいのは、いま建っている建物が、現行法に適合しているかという点です。
- 既存不適格 ― 建築当時は適法だが、その後の法改正で現行法に適合しなくなった建物
- 違法建築 ― 建築当時から法令に違反している建物
- 再建築不可 ― 接道義務を満たさず、建て替えができない土地
これらは融資が付きにくく、将来の売却にも影響します。価格が相場より安い場合、この点が理由であることがあります。
3. 私道に関する負担
敷地が私道に接している場合、その私道の所有者・持分・通行や掘削の承諾があるかを確認します。水道管の引き込み工事に私道所有者の承諾が必要となるケースがあり、承諾が得られないと工事ができません。
4. 飲用水・電気・ガスの供給施設
整備済みか、未整備なら整備の見込みと費用負担は誰かを確認します。特に前面道路に本管が来ていない場合、引き込み工事に数十万円から百万円単位の費用が発生することがあります。
5. 建物状況調査(インスペクション)の結果
既存住宅の場合、建物状況調査を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要が説明されます。実施していない場合でも、その旨が記載されます。
調査を実施していない中古物件では、構造上の問題や雨漏りの有無が未確認のまま取引されることになります。
6. 契約の解除に関する事項
最も金銭的影響が大きい項目です。
| 解除の種類 | 内容 |
|---|---|
| 手付解除 | 相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄、売主は手付の倍額を返還することで解除できる。期限が設定されていることが多い |
| ローン特約による解除 | 住宅ローンの承認が得られなかった場合、契約を白紙解除できる。期限と、対象となる金融機関・融資額の記載を確認 |
| 契約違反による解除 | 債務不履行があった場合。違約金の額(売買代金の10〜20%が一般的)を確認 |
ローン特約の期限は特に重要です。この期限を過ぎてから融資が否決されると、白紙解除ができず、違約金が発生する可能性があります。
7. 契約不適合責任に関する事項
引渡し後に、契約の内容に適合しない不具合(雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障など)が判明した場合の取り扱いです。
売主が個人の場合、責任を負う期間を引渡しから3か月程度に限定する特約が設けられることが一般的です。この期間と、対象となる範囲を確認しておく必要があります。
重要事項説明書と売買契約書の特約欄には、個別の取り決めが記載されています。定型部分よりも、この特約欄に将来のトラブルの種があることが多いのが実情です。
意味が分からない条項は、その場で必ず質問してください。「分かりました」と言わないことが、最も重要な自衛策です。
説明を受ける前にやっておくこと
- 重要事項説明書を事前に送付してもらう
- 読んで分からない箇所に印をつける
- 疑問点を質問リストとして書面で提出する
- 可能であれば、回答も書面でもらう
書面でやり取りを残しておくと、後日「聞いていない」という争いを防げます。これは相手を疑うということではなく、双方の認識を揃えるための実務です。
まとめ
重要事項説明は、法律が「これだけは説明しなさい」と定めた最低ラインです。裏を返せば、聞かれなければ説明されない事項も存在します。
事前に書面を入手し、疑問を整理して臨む。この準備があるかないかで、同じ1時間から得られる情報量はまったく変わります。
・民法(契約不適合責任、手付解除に関する規定)
・建築基準法(接道義務、既存不適格建築物の取り扱い)
・具体的な契約条件・特約の内容は、個別の取引により異なります。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の物件・取引の勧誘や、投資・税務・法務に関する個別の助言ではありません。実際のご判断にあたっては、必要に応じて税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
重要事項説明書、一緒に読み解きます。
事前に入手された書面について、確認すべき論点を整理してお伝えします。宅地建物取引士・元銀行員の両面から、契約条件と融資条件を検証します。